(体験版)

作・飛田流  





 窓を締め切っていても、安普請のプレハブの隙間からは師走の冷たい夜風が室内に容赦なく入り込んでくる。先月の末に物置から引っ張り出されてきた小型電気ファンヒーターが片隅で必死にうなり声を上げているものの、元がトイレ用のそれでは、OA機器とファイルが積みあがったスチール机が大半を占める室内を隅々まで暖める力はない。

 あちこちに染みと塗料の剥がれが目立つ壁には、社員の予定表のボードが張られ、八畳間の部屋全体には、濃縮したような男くさいにおいが立ち込めている。全体的に質素な内装の中、立派なのは横綱級のしめ縄をまとった神棚ぐらいのものだ。

 その神棚の真下で、小柄でずんくりとした、短髪・ひげ面で四十代前半ほどの男が自席に座り、無骨で節くれだった手の中にあるケータイのメール画面を仏頂面で見つめていた。

 胸の辺りに白文字で「TAKUCHAN」とプリントされた黒のトレーナーを肘までまくり上げ、毛深く太い左腕で机に頬杖をついている彼は、お世辞にも立派とは言い難いこの会社「タクチャン引越センター」の社長、神戸琢蔵(かんべたくぞう)である。

 画面の文章は、前置きもなく、こんな出だしで始まっていた。



 ――『あの橘ってのなんとかなりません? アイツ超ありえねえんすけど』



『バイト辞めます』というタイトルの、そのメールの送り主は、堂島亮太(どうじまりょうた)という十八歳の青年である。琢蔵が今日の現場で先輩バイトの橘洋平(たちばなようへい)とコンビを組ませた、高校中退のフリーターだ。

 なんとも唐突な一文に、いかめしい面構えをさらにしかめた琢蔵は、ごつい親指でボタンを操作し、画面を下にスクロールさせた。

 そこには、指導役の洋平から研修期間中に、「口の利き方がなってない」「荷物は粗末に扱うな」「腰パンはやめろ」と口うるさく注意され、文句の一つでも言おうものなら、いきなり拳骨で殴りつけられた――などの恨みつらみがびっしりと並んでいた。

(……よくもまぁ)

 琢蔵の胃の腑の奥底から、苦い汁のような感情がこみ上げてくる。

(キレて現場を飛び出したてめえの不手際棚に上げて、他人の悪口をここまで書けたモンだ)

 直後、洋平から連絡を受けた琢蔵がすぐさま現場に駆けつけて客への謝罪と残りの作業をこなし、なんとか事なきを得た。だが、一歩間違えば、補償や会社の信用問題にまで発展したかもしれない。

 メールの最後には、堂島名義の銀行口座の支店名と番号が書かれている。どうやらここに今日までの一週間と半日分のバイト代を振り込め、ということらしい。

(随分と手際のおよろしいこって……)

 画面から漂う悪意を断ち切るように、渋い顔で琢蔵はオレンジのケータイをパチンと音を立てて閉じた。

 それから琢蔵は、その奥にある部下の席へと視線を移す。

 そこには、堂島にさんざんこき下ろされた坊主頭の青年、橘洋平が自分の席でノートパソコンに向かっていた。しかし、うなだれた彼の両手はキーボードの上で止まり、画面では宇宙空間に無数の星がいつまでも瞬いていた。

 いつもは余計なことまでよくしゃべる洋平も、さすがに今日のことは応えたらしい。夜七時に琢蔵と二人で会社に戻ってから二時間、他の社員が帰った後もずっとこの調子だ。

「むう……」

 もっさりとしたラウンドひげを蓄えた琢蔵の肉厚の唇から、とびきり熱い湯に浸かったような声が漏れる。

 琢蔵は、机上に積み上がったファイルの束を崩さぬよう、吸殻で満杯の灰皿をその隙間からそろそろと引っ張り出した。

 そして、机の引き出しを開けて煙草の箱を取り出し、中身の一本にライターで火をつける。

 まだ頭をうなだれている洋平を、紫煙をふかし、見つめる琢蔵。

 脳裏には、数か月前の「あの夏」のことが思い浮かんでいた。



 ――初夏。

 当時から人員不足だった「タクチャン引越センター」では琢蔵自らが陣頭に立ち、不眠不休で働いていた。

 七月も上旬に入ったその日も午前に一件引越の仕事をこなし、昼前に現場からあわただしく事務所に戻った琢蔵は、途中コンビニで買った豚生姜焼弁当を自分の席であわただしく掻きこんでいた。だが、飯を口に運んでいる最中にも、強い睡魔が琢蔵に襲い掛かってくる。

「社長、このままじゃ体を壊してしまいますよ」

 箸を右手にうつらうつらと船を漕いでいた琢蔵に、七年前に入社した社員蓮田が白くふくよかな顔を心配そうにしかめ、自分の席から声を掛けてきた。

「お、おう、わかっとる」

 あわてて飯に食らいつきながら、そう返事をする。

 今年に入ってこの半年の間に、琢蔵の会社ではバイトが次々と辞めていった。重い荷物をスピーディーにかつ丁寧に運ぶことが要求される引越業は、見かけ以上にハードな面があり、バイト初日にして半日で辞めた者や、そもそも仕事場まで来なかった者さえいた。この人手不足の現状では、早いうちに人員を補充しなければ、仕事にも琢蔵の体調にもさほど遠くない時期に支障が出てくるだろう。

 幸いにして、今日の午後一時に琢蔵の母校・飛流大学の学生が、バイトの面接に来ることになっている。

(この際どんな野郎でも贅沢は言ってらんねぇな……)

 偏差値的にかなりの下位ランクに属する飛流大学は、「ひりゅう」ならぬ「しりゅう(四流)」の異名で世に知られている一方、応援団部だけは昔から数々の受賞歴があり、長い伝統を保ち続けている。以前は琢蔵自身も含めて、学力に難がありかつ腕力で名を轟かしたバンカラ学生が中心だったが、最近ではオタク系の青びょうたんの輩も少なくないらしく、応援団にもなかなか人が集まらないと聞いた。

(……まったく、なげかわしい限りだ)

 応援団のOBで、第十七代目団長でもある琢蔵としては、この問題も頭の痛いところではある。

 大学の学生課から送られてきたファックスによると、今日面接する青年の名は橘洋平というらしい。さて、この青年はどれほど長く勤めてくれるだろうか。

 嘆息した琢蔵は、あわただしく弁当を口に掻きこむと、いつもの癖で太く短い両脚を机に投げ出し、昼休みが終わるまでスポーツ新聞の競馬欄に目を通していた。

 ――その数十分後。

「……俺、橘っていうんすけど、社長のコウベさんいるっすか」

 半分眠りに落ちていた琢蔵の耳に、若い男が自分の名前を呼ぶ声が届いた。

「コウベじゃねえ、カンベだ。坊主」

 これまでに何度となく初対面の人間に言い直してきたセリフを反射的に口にした琢蔵は、いつの間にかアイマスク代わりになっていたスポーツ新聞を顔から取り払った。まだ夢うつつから覚めやらぬ琢蔵の目に、玄関の戸のわずかな隙間から浅黒く日に灼けた顔を半分覗かせた青年の姿が映る。彼はおそらく面接に訪れた橘洋平だろうが、なぜか物怖じした表情のままいつまでも事務所に足を踏み入れようとしない。

「さっさとこっちゃ来んか、坊主」

 机から両脚を下ろした琢蔵は、寝起きと疲労でピントが合わない目をしばたたかせながら、仏頂面で青年に手招きをした。しばらくして、おずおずと事務所に入ってきた青年をふたたび琢蔵が見たその時、

(……ほう)

 琢蔵の視線がぴたりと止まった。

 赤いTシャツによれたジャージを着たその青年は、今どきの色気づいた若者たちとは真逆の、どうにも垢抜けない雰囲気を漂わせていた。背は一七五センチ程度で長身と言うほどでもなく、中途半端に伸ばしたぼさついた髪形、太い眉、無愛想に見開かれた目、でかい鼻に分厚い唇と、まず間違いなく琢蔵と同様、女に縁のない人生を送ってきたに違いない。

 もっとも、筋金入りの(おとこ)好きである琢蔵の場合は、元から何の問題もないわけだが――。

(なかなか上玉のイモ兄ちゃんじゃねえか)

 心の中で舌なめずりをした琢蔵は、椅子に座らせた洋平の筋肉の付き具合をシャツの上からまず軽く確認した後、いきなり彼の太股の内側に手をするりと滑り込ませた。

「う、ひぃぃぃぃっ! な、なにをっ」

 洋平の抗議などものともせず、下心を鬼のような閻魔顔の下に隠した琢蔵は、自身のごつい指で洋平の体の隅々まで入念にチェックを開始した。

「あ、足腰にもちゃんと筋肉がついてるかどうか、かっ、確認しねえと、なっ」

 すでに、この時点で洋平の採用は決定していたが、彼の広い肩幅、厚い胸板、むっちりとした尻のライン、大き目の股間の膨らみに至るまで、琢蔵のチェックはとことん念入りに、かつ執拗に続けられた。



 半ば私情で採用した洋平だったが、野球部出身ということもあってか意外に体力と根性があり、その後一か月間、ハードな仕事にも――少なくとも琢蔵の目の前では――弱音を吐くことはなかった。

 八月の初め、洋平が帰った後の事務所で、琢蔵は見積書の作成をしている蓮田に声を掛けた。

「蓮田ぁ、あいつの……橘の面倒をしばらく見てやってくれねえか」

「ええ……わかりました」

 いま思えば、顔を上げた蓮田の表情に微妙に影が差したのかもしれないが、その時の琢蔵はそれに一切気付くことなく、こう尋ねた。

「おめえの目から見て、あいつぁどんな感じだ」

 蓮田はパソコンのキーボードを打つ手を止めて、長めの柔らかな前髪を掻き上げてから、少し考えた。

「いいと思いますよ。橘君、明るくて素直だし、根性もありますから」

 その答えに満足した琢蔵は、

(こいつぁ……案外拾い物かもしれねえなぁ)

 と、ひげ面に野卑な笑みをにんまりと浮かべ、満足げに二度三度うなずく。

「そろそろあいつの歓迎会をやってやんねえとな」

 蓮田は色白の柔和な顔をほころばせ、「いいですね」と琢蔵の提案に白い歯を見せた。

「じゃ、場所は駅前のいつもの居酒屋でいいでしょうか」

 琢蔵は「おう」とうなずいた後、一拍間を置いて、「ああ、橘にはまだ知らせんなよ」と付け加えた。

「あいつぁどうも調子に乗りやすいタチみてえだからな」

 琢蔵に調子を合わせ、蓮田も「もちろんわかってます」といたずらっぽくにっこりと笑い、うなずく。

「座敷の空きがある日を、お店に確認してみますね」

 今回もまた、蓮田は新人歓迎会の幹事を引き受けてくれるつもりらしい。

「悪ぃな蓮田、毎回毎回」

「いいんです」

 蓮田は、机の引き出しから取り出した手帳をめくりながら、育ちのよさそうな顔を軽く左右に振った。

「僕は社長のお役に立てればそれで……」

 そのあと蓮田は、両端が少し持ち上がった唇を軽く噛み締めて何かを言いかけたが、その口からそれ以上の言葉が出ることはなかった。

 ――と思った琢蔵が、机上の書類に目を落としかけた直後。

「……社長、なるべくお酒は飲みすぎないでくださいね」

 蓮田の言葉にふと琢蔵が顔を上げると、すでに彼は電話で駅前の居酒屋と会話を始めていた。



 それから一週間後、洋平の歓迎会が開かれた。

 午後八時に酒宴が始まって数分で、蓮田の忠告などとうに忘れた琢蔵は、ビールと日本酒をチャンポンで幾度となく胃に流し込んでいた。

 琢蔵が隣に呼び寄せた洋平は、そのうわばみ振りに酌をする手を止めて、ただ唖然としている。

「おっし、橘。おめえが俺に呑み勝ったら、なんでもおめえの言うこと聴いてやらあ」

 酔ったときの琢蔵の常套句に一瞬呆然とした洋平は、次の瞬間、大きな目をさらに大きく見開いた。

「じゃ、じゃあ社長、バイト代上げてくださいっすっ!!」

「おう、いいぜぇ」

 意味ありげに、琢蔵は笑う。

(その代わり、俺が勝ったら……な)

 そして、琢蔵と洋平の呑み比べが始まった。

 ……が、大ジョッキの五杯目を二人で一気に飲み干したところで、顔を真っ赤にした洋平は座敷の真ん中でぶっ倒れてしまった。

「ったく、もうちょっと相手になるかって思ったんだがなぁ」

 どこかわざとらしさの残る口調で目尻を下げてにまにまと笑いながら、酔いの片鱗すら表情に出さない琢蔵は、座敷をぐるりと見回す。すでにほとんどの社員が酔いつぶれている中、隅の席で事態を心配そうに見つめていた蓮田に、琢蔵は右手を大きく上げた。

「おぉい蓮田、悪ぃがタクシー呼んでくれや」

「……」

 蓮田は、一瞬真顔で黙ったものの、

「はい、わかりました」

 またいつもの温厚な表情に戻り、会社のユニフォームのカーゴパンツのポケットからケータイを取り出した。



「よっ……と」

 駅前の居酒屋から出したタクシーを自社のプレハブ前で停めさせ、料金の支払いを済ませた琢蔵は、いまだ意識のない洋平を、城から姫君をかっさらってきた山賊のように太い両腕に軽々と抱えて車から降りた。

 会社の事務所の裏に、同じプレハブをユニットでくっつけた琢蔵の自宅がある。

 裏の玄関口まで来ると、七十キロ以上はある洋平の体をひょいと琢蔵は左腕で抱え直し、ズボンのポケットから取り出した鍵で、建付けが悪いアルミ戸を開ける。同時に、酒と煙草と中年男の加齢臭が混ざり合う蒸し暑い臭気が、琢蔵の鼻腔の奥までむっと漂った。

 洋平が目を覚まさぬよう明かりは消したまま室内へと入り、床に散乱した食べかけのコンビニ弁当、脱ぎ散らかした下着、そして「使用後」のティッシュくずなどを踏まぬよう足元を慎重に運ぶ。

「……見るだけぇ、見るだけだからなぁ、勘弁してくれよぉ、橘」

 十数年前に引越の客から捨てるように言われ、自分で引き取った中古のベッドの上に琢蔵は洋平の体をそっと寝かせた。

 網戸だけを残して開け放った窓から、野外の蒸れた熱気と月の光が入り込む。薄暗い明かりを頼りに、琢蔵は手早く洋平のユニフォームと靴下を脱がせていった。その手際の良さはまるで、ひげを生やしたベテラン風俗嬢のようだ。

 洋平から一枚ずつ衣服を剥ぎ取っていくたびに、青春真っ盛りの若人の香りが、熟成した雄のにおいが漂う部屋に交じり合っていく。

「へへ……青春バンザーイ、とくらぁな」

 闇の中でだいぶ目が慣れてきた琢蔵は、いまだ目を覚ます気配のない洋平の肢体に目を凝らす。そこには、固く締まった筋肉が全身を包み込む、ボクサーパンツ一枚の若者が横たわっている。体毛はさほど多いほうではないが、その分張りのある肌触りが存分に味わえるだろう。

 洋平の体から立ち上る青臭いにおいを肺の奥までたっぷりと吸い込んだ琢蔵は、分厚い胸を高鳴らせ、汗と小便の染みでじっとりと湿った下着に手を掛けた。

「おめえが、悪ぃんだぞぉ……さっさとぶっ倒れちまうからよぉ……」

 多少の罪悪感を子供じみた言い訳で中和し、洋平の股間を覆う最後の一枚を両手でぐいと引き下ろす。

「おぉ……」

 むせ返るような雄臭とともに、密集する性毛に包まれた洋平の秘肉が顔を出した。

「なかなか生意気なモンぶら下げてんじゃねぇか」

 図太く長いずる剥けの肉棒、ふさふさと茂る縮れ毛、そして、子種汁がたっぷりと詰まっていそうなぼってりとした玉袋。それは面接の日に琢蔵が指の先で思い描いていたイメージよりも、さらにスケールが大きかった。

「……む」

 生々しい視覚と汗臭い匂いの誘惑に、ふと無意識のうちに淫肉を味わおうとして半分出し掛けた舌をあわてて引っ込める。

「おっとぉ……いけねぇいけねぇ。今日は触るだけぇ触るだけぇ、ってな」

「見るだけ」のつもりが、いつの間にか「触るだけ」にすり替わっていることに、興奮も最高潮に達した琢蔵はまったく気付いていない。

 鼻息も荒く、もどかしげに琢蔵は自身のユニフォームのTAKUCHANTシャツとカーゴパンツを一気に床に脱ぎ捨てていく。その下から、常人の二倍の太さはあろうかという逞しい手足、がっしりとせり出した分厚い胸板、脂肪がたっぷりとついた腹と尻、そして全身を覆いつくす小山のような筋肉と濃い体毛が現れた。

 最後に、一週間穿き続けて強烈な雄のにおいが立ち上る白ブリーフもするりと下ろし、すべてが露わとなった琢蔵の股間では、長年使い込まれどす黒く変色した図太い砲身がむっくりと頭をもたげ、びくりびくりと脈動を始めていた。

 ――ちなみに、「見るだけ」「触るだけ」なのに、なぜ琢蔵まで裸になったのか。

 それは、興奮すると自ら進んで裸になってしまう、琢蔵の性癖からである。

 一糸まとわぬ姿となった琢蔵は、薄暗い闇の中で、つま先歩きで抜き足差し足ベッドに忍び寄る。

「じゃ、さっそくおめえのお宝、じーっくり拝ませてもらうぜぇ」

 マットレスに角張った両手を付いた琢蔵が、交尾中のヒキガエルのように毛深い尻を後ろに大きく突き出し、やに下がったひげ面を洋平の股間に近づけた、その時だった。

「う、うう……ん」

 くぐもった洋平の声にどきりとする。目を覚ましたのか。全身の血が逆流し、心拍数が一気に上昇する。身を隠そうにも、小柄な格闘家のような琢蔵の隆々とした体躯を隠すのは、この狭い部屋では不可能だ。

 ベッドの脇に置いてあったタオルケットを急いで引っつかみ、自分と洋平の体に掛けたものの、

「……ぐっ……」

 思わず体重が乗った右手をシーツに突いてしまった。

 マットレスが大きく沈み、ベッドがぎしりと揺れる。

「……ひぃっ!」

 しゃっくりのような洋平の悲鳴の後、

「…………」

 沈黙が長い間、部屋を支配した。

 進むことも退くことも、ましてや目の前の「お宝」を咥えることもできずに、雄のにおいが充満するタオルケットの中で琢蔵は、ただ息を潜めていた。

 洋平の足がずりずりと後ろに下がり掛ける。

 おそらく数秒後に待っているのは、紛れもない修羅場だ。

(やべぇな……こりゃ)

 真夏の蒸れた熱気の中、琢蔵の背筋を冷たいこんにゃくのような緊張感がずりずりと這い登っていく。

(な、なんで俺、裸なんすかっ!)

 と、もし洋平が噛み付いてきたら、琢蔵はなるべくすまなそうな顔をして、

(いや、そのほうが楽だと思ってよぉ)

(じゃ、なんで社長まで裸なんすかっ!!)

(あ……、それは、そのなんだ。俺も寝るときゃマッパなわけで……)

 自身の長く苦い経験に基づいた「ノンケ喰い用言い訳メモ集」を、琢蔵が脳内で目まぐるしくめくり返していると、

「……ぐぉぉ、っ!」

 突然、洋平の脚が琢蔵の顔を蹴りつけてきた。

「ちょ、ちょっと、待……」

 洋平の足の裏と無理やりキスをさせられながらも、身を乗り出した琢蔵は強引に彼の太腿を押さえつけた。だが、その鼻先に……。

(お、おい……)

 汗で蒸れた洋平の熱い雄肉がむにゅりと押し付けられた。仕事でたっぷりと汗を掻き、さらには酒の匂いも混ざり合ったそれは、生粋のゲイの琢蔵にとって、これ以上ない淫靡な芳香を放っている。

(こ、これは……誘ってんのか、俺をっ)

 据え膳食わぬは男の恥。それはゲイの世界とて同じ話である。自制心という名の(もろ)い崖が豪雨で一気に崩れていくように、もはや〇.〇〇一秒の迷いもなく、琢蔵は()えた雄臭をぷんぷんと放つ洋平の肉竿をぱくりとくわえ込んだ。

「あ……んんっ!」

 喉の奥が締め付けられたような洋平の声が出るや否や、足の動きもぴたりと止まる。

「……うぁっ、ん……んんっ」

 ほどなく甘い快楽に満ちたかすれ声が、洋平の唇から漏れ始めた。

(おうおう、そそる声出しやがって)

 我が意を得たりとばかりに琢蔵は分厚い舌を尖らせ、鈴口をちろちろと刺激してやる。

「ん、……っ、は、ぁぁぁぁっ!」

 それと呼応するように張りのある太腿はぶるぶると震え、琢蔵の口中の粘膜に包まれたがちがちの屹立からじわりと先走りが染み出てきた。

(やっぱヤングチンポの味は格別だぜぇ……)

 最近は仕事が忙しく、ハッテン場にもあまり出入りしていなかったこともあり、久しぶりの肉の味に琢蔵の舌がうずく。

 塩辛いそれをじゅぶじゅぶと音を立てて丹念に刺激する、熟練した琢蔵の舌戯に、洋平の声がさらに甘く、とろけていく。

「……うぁっ、ん……んんっ」

 びくく、びくくと口中で歓喜の(うごめ)きを続ける熱塊の躍動を感じながら、琢蔵はひげに覆われた肉厚の口を思い切りすぼめ、亀頭の先から雄竿の根元まで、緩急をつけて強く吸い上げながら、じゅぽんじゅぽんと卑猥な音を立てて、しっかりとしゃぶり上げる。

「ん……ふぅぅん……ぁぁっ」

 熱い吐息が次から次へと洋平の口から漏れ出してくる。こうなればもうこっちのものだ。性根をすえてじっくりと若い雄肉を味わってやる。

「く……ぅぅっ」

 唾液と先汁が交じり合った雄臭い空間の中で、琢蔵が肉棒への責めをねっちりと続けていると、洋平はこわばらせた体中の筋肉を時折小刻みに震わせ、押し殺すように嬌声を漏らした。その若い肉筒もまたびくんびくんと震えながら、琢蔵の口の中で大量の生臭い蜜をだらだらと吐き出していく。

(おいおい、まさかもうぶっ放しちまったんじゃあねえだろな)

 とも一瞬琢蔵は思ったが、口の中に広がる、塩辛くぬるつくそれはまさしく我慢汁だ。

(こりゃぁ……よっぽど溜めてたな、こいつ)

 底知れぬヤングパワーに圧倒されそうになるが、琢蔵とて伊達に年を取ってきたわけではない。洋平の分身をじっくり味わいながらも、分厚い舌を竿に絡ませ、口蓋(こうがい)で先っぽを、舌で幹を同時に刺激した。

「ちょ、っと、タンマ……出るっ、汁、出ちまうっ」

 タオルケットの向こうで、洋平が窮した声を上げる。

(ったく、近頃の若い野郎はチンポまで根性ねえのか……)

 ヤングチンポをもっと含味(がんみ)していたいところだが仕方がない。心の中でため息をつきながらも、琢蔵は口の動きを、じゅっぽじゅっぽとさらに速めた。

「んぁぁぁぁぁぁぁぁっ……すげ、すげっ、すげぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 洋平ももはや快感の虜となったのか、自ら腰を突き上げて、琢蔵の口を犯していく。

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ!!」

 琢蔵も一歩も退かず、喉奥ぎりぎりまで洋平の砲身をくわえ込み、頭を激しく振り立てて強烈な刺激を与えた。

「っ……出るっ、出るっ、出るぅぅぅっ!」

 限界まで上ずった一声の後。

 びゅるる、と音を立てて、洋平の鈴口から発射された奔流の一撃が琢蔵の口蓋垂(こうがいすい)(喉ちんこ)まで流れ込んだ。

(ん……ぇぇっ?!)

 が、雄汁がなまじの量ではなく、しかも濃さも半端ではない。次から次へと雄汁はあふれ出て、たちまち琢蔵の口の中は白濁の(うしお)で大洪水となった。

 飲み込もうにも飲み込めず、咳込んだとたんに、行き場を失った雄精は、琢蔵の口の端からどろりと漏れ、さらに鼻の奥にまで入り込んでいく。命の危険すら感じかねないほどの量だ。

「うげっ、げほっ、うげぇっ!」

 顔中を洋平の雄汁まみれにした琢蔵は、喉と鼻の気管にねばりついた子種汁を少しでも吐き出すべく、必死で咳を繰り返した。

「あるわけ……ねえよ、な」

 タオルケット一枚を隔てた向こうでは、洋平が呆然とした口調で意味のわからぬ言葉を口にした。

「げほっ……おめえ、どんだけ溜めてたんだおい」

 なんとか一息ついたところで、いつもの調子で口に出したものの、洋平は返答しない。琢蔵の超絶テクニックに、言葉も出ないほど感じてくれたのだろうか。

 それにしては、沈黙がなぜか異様に長い気もする。

「……いぃっ!」

 天地がひっくり返ったような声が琢蔵の耳に届き、また長い間を置いて。

「社長?」

 自分の身に起きた変事の真偽をまだ大いに疑っている様子で、おずおずと洋平が問う。

「おう、なんだ」

 答えたついでに琢蔵はむっくりと起き上がり、部屋の中心に吊り下げられている蛍光灯の紐を引いた。

 明かりが灯り、汗と白濁で艶かしく濡れた洋平の体と、対照的に引きつった彼の顔が琢蔵の目に映る。

「ったく……鼻の奥までおめえの濃いぃ汁入っちまったぜ、ちくしょう」

 照れ隠しに苦笑いを浮かべながら、不満めいた口調で琢蔵はつぶやいた。

 だが洋平は、舞台で見得を切る歌舞伎役者よりもさらに大きく目を見開いたまま、彼だけ時が止まったかのように微動だにしない。

「ひ……」

 こわばっていた洋平の顔が徐々に恐怖でゆがんでいき――。

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 ホラー映画のワンシーンのような悲鳴を上げた。



 そして、この夜が元で一か月後、「あの事件」が発生することとなる。

 それを企てた人物は、その後、琢蔵の会社から逃げるように去った。

 他の社員たちには、彼が「実家の函館に帰ることになったそうだ」と説明はしておいたが、今でもこの後味の悪い顛末(てんまつ)は、仕事の面でも、琢蔵の心にも大きな穴をぽっかりと残している。

 当時、洋平にはつらい目に遭わせてしまったが、その後琢蔵の紹介で大学の応援団部に入団した彼は、バイトも辞めることなく、週三回琢蔵の会社で働いている。

 やはり、この青年の肝の太さは並ではない。

 ――あるいは、単に鈍感なだけなのかもしれないが。

 いずれにせよ、自分の無頓着さが原因で迷惑を掛けてしまった以上、洋平には早く一人前になってもらいたい。だからこそ、仕事中の琢蔵はことさら洋平に厳しく接している。

 その琢蔵のスパルタ指導を受けた洋平が、自分の後輩に同じように厳しく指導をするのは至極当然のことである。新人同士コンビを組ませることに、琢蔵にも多少の不安はあったが、洋平にも先輩としての自覚を持ってもらいたいと思い、あえて堂島の指導を任せたのだが、かえって裏目に出てしまったようだ。

 琢蔵にしても、血気盛んな若いころは、周りの人間と不和を起こしたことは数知れずある。だからこそ、少々問題を抱えていそうな若者でも、前歴を問わず雇い入れてきたし、彼らのうち何人かは琢蔵の重要な片腕として、今でもこの会社で働いてくれている。

 だが、もはやそのようなやり方は、今の時流にそぐわないのだろうか。

「……社長?」

 琢蔵がぼうっとしている間に、いつの間にか洋平が、琢蔵の机の前に立っていた。

「あ、ああ。なんだ」

「すんません、俺のせいで……」

 洋平は神妙な面持ちで坊主頭を深く下げた。

「俺、堂島の奴に早く一人前になってもらいてぇって思って、つい……」

「ああ……」

 それ以上の慰めの言葉が口から出てこない。

 間が持たずに、定員オーバーの灰皿の側面で、半分まで吸った煙草を無理やり揉み消した。

(こいつがホモなら、四の五の言わずにキスして抱いちまうんだがな……)

 職場から逃走した堂島の行為や、彼から送りつけられたメールを見ても、おそらく洋平のほうに分はある。だが、一方で洋平の指導にも行き過ぎた点はあったのかもしれない。

 ――たとえ、琢蔵が同じように堂島を厳しく指導したとしても、だ。

「……んん……」

 悩んだところで、黒々としたひげに覆われた小ぶりの明太子のような琢蔵の唇から、何か気の利いた言葉が出てくるわけでもない。

 自分でも気がつかないうちに、琢蔵の右拳がぎこちなく持ち上がっていく。そして、

「馬鹿、辛気臭ぇ顔すんじゃねぇっ!!」

 それは洋平の頭に振り下ろされた。

「いてっ!!」

「いちいちいちいち、ンなちっちぇこと気にしてたら、世の中生きていけねえだろがっ」

 この手の荒くれたセリフなら、口からいくらでも出てくるのだが……。

「す、すんませんっ!!」

 恐縮した顔で頭を下げる洋平に、琢蔵は心の中で舌打ちをする。洋平にではなく、短気過ぎる自分自身に対してだ。

 なぜいつもこうなってしまうのか。これではいつまでも洋平との上下関係が変わることはない。

「……ま、もういい」

 拳をぎこちなく下ろしながら、歯切れ悪く琢蔵はつぶやく。

「今日は、ほんとに……すんませんでした」

 洋平はもう一度頭を下げて、席に戻ろうとした。

「……」

 その背中を目にした時、不意に琢蔵の本能が唇を動かした。

「ちょっと待てや」

 ひときわドスの利いた声を出し、むっつりとした表情で琢蔵は椅子から肉厚の大きな尻を持ち上げると、洋平の前にのしのしと歩み寄った。

「えっ……」

 ただ立ちすくんでいる洋平を、琢蔵はいかつい悪相で睨みつける。琢蔵が機嫌を損ねたとでも思ったのだろうか、見る間に洋平の顔が凍り付いていった。

 ――瞬時の後。

「ふ……んっ」

 無骨な手で、琢蔵はいきなり洋平のカーゴパンツの股間をむんずとつかみ上げた。

「ひ、ぃぃぃぃぃっ!!!」

 男のいちばん弱い部分を捕らえられた洋平の口から、露出魔に出くわした乙女のような甲高い悲鳴が出る。

「一晩じーっくり掛けて、男との接し方について俺がおめえに再教育してやんねえとなぁ、んん?」

 好色な笑みを浮かべた琢蔵は、洋平の股間をいやらしく揉みしだいた。厚い布地の上から琢蔵の極太の指が洋平の鈴口を一発で探り当て、ぐりぐりと攻め立てる。

「そ、そこは、ちょっと、あのぉ……」

「んん?」

 琢蔵はにっと笑うと、続けて太い指二本で洋平のズボンのウェストボタンを器用にはずし、ごつい手をするりと洋平の下着の中に滑り込ませた。

「うへぇっ!!」

 ベテランスリ、ないしは痴漢のような鮮やかな手さばきに、あっけに取られた洋平はただただ驚きの声を上げるのが精一杯だ。

 これまた長年の引越業で培った実に繊細な指さばきで、熱く湿った雄棍と双玉を(じか)に柔らかく弄んでやる。

「なんだおい……金玉がずっしり重くなってんじゃねえか」

「ぁ、っ、そこ……駄目っす……っく、んん……っ」

「駄目」と言いながらも、雄の膨らみを琢蔵に文字通り手玉に取られ、発情した雄犬のように、わななく唇から熱い吐息を漏らし続ける洋平。若い欲望の発露は、すぐに琢蔵の指先をねっとりとぬるつかせた。

「おめえ、ちゃんとヌイてねえから、仕事でもイラつくんじゃねえのか」

 洋平の耳元にヤニくさい吐息を吹き掛け、熊が獲物を仕留めるようにその肩に毛深い左腕をがっしりと回す。

「今日もヤってくよな」

「……うっす」

 顔を真っ赤にした洋平の唇から、聞き取れないほどの小さな声が出た。

(かわいいよなぁ……ほんとおめえはよぉ)

 心の中でほくそえんだ琢蔵は、バンバンと洋平の肩を叩く。

「さ、ションベンしてシャワー浴びてヤるぞっ」

「…………はは」

 あまりにも欲望に正直な琢蔵の言葉に、発情期から一転、去勢された雄犬のように洋平は力なく笑った。



 ――三十分後。

 洋平は部屋で待たせ、先にトイレとシャワーを済ませた琢蔵は、空きスペースが半畳もない脱衣所で、水垢で汚れた洗面台の鏡と素っ裸で睨み合いながら、短めに刈り込んだ後頭部に両手の太い指を立てがしがしと養毛剤を擦り込んでいた。

「……ここぉでぇ尽くすぞ、我がぁベストぉ……とくらぁ」

 鏡に映る、毛深く屈強な二の腕には見事な力瘤が作られ、剥き出しになった腋の下にはふさふさと茂る脇毛が覗く。脂肪で突き出た毛深い腹の下の、年齢と経験相応に黒ずんだ愚息も、こぶしの利いた鼻歌に合わせてぶらぶらと揺れていた。

「……うっし」

 頭皮ケアを終え、左手で気合の腹鼓をポンと打った琢蔵は、熊のように毛深い体躯をタオル一枚ですら隠すことなく、のっそりと脱衣所を出た。

(さぁて、今日も若人の雄汁をたっぷり搾り出してやるとすっか)

 自慢の太竿をふてぶてしく揺らしながら、ホコリの跡がくっきりと見える細い廊下をがに股でどすどすと歩き、汚れ物が積み上がった台所の奥にある自室へと向かう。

「おう、いま上がっ……」

 事務所と同じ機種の小型ファンヒーターが片隅で静かなうなりを上げている室内に一歩入ったとたん、琢蔵の足が止まった。

 相変わらず、部屋の床はコンビニ袋やらスポーツ新聞やら酒の空き缶やら、果てはローション・オナホールまでが足の踏み場もないほどにひしめいている。まだ服を着ていた洋平は、その中でかろうじて空いているベッドの隣で立ったまま、ケータイで誰かと声を潜めて話をしていた。

「……ああ、じゃまた明日あらためて。どもっす」

 琢蔵の気配に気づいた洋平は、電話の相手と琢蔵、交互に頭を下げながら、そそくさとケータイを閉じる。

「……」

(な、なんだこの親密かつ秘密そうな会話は……)

 洋平と琢蔵、どちらも気まずそうな表情で口を開かないまま、微妙な空気だけが広がる。

「……お、おめえ」

 一瞬考えたあと、琢蔵は話題をそらすことにした――。

「ま、ま、まだ、服、脱いでねえのかっ」

 ……ものの、野太い声が妙に上ずる。

「すんません。あの……」

「なんだ、言ってみろ」

「あの、でも……」

 どこか深刻な顔で、言葉を濁し続ける洋平に業を煮やした琢蔵は、

「っかぁぁぁっ、じれってぇ!!」

 そう雄叫びを上げると、洋平の肩にごつい腕をがっしと回し、自分の体にぐいと引き寄せた。

「っ、ぁぁぁっ!!」

 琢蔵の片手一本で洋平は大きくよろめき、濡れた体毛に覆われた分厚い胸に洋平の体はやすやすと預けられる。

「俺たち、チンポとケツの穴まで見せ合った仲じゃねぇか。今さら何の遠慮もいらねぇだろがっ」

 言葉を急かすように、洋平のトレーナーの肩に回した毛深い腕にさらに力を入れる。

「じゃ……じゃぁ、言わせてもらうっすけど……」

 口ごもりながら、洋平はやっと重い口を開いた。

「もう…………俺たちのこういう関係、終わりにしたいんすけど」

「…………ぇっ」

 何を……何を、洋平は、言ったのか。

 混乱のあまり、頭の中が真っ白になっていく。

 数秒の後。

「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」

 気がついたときには、琢蔵は両手で洋平の肩をぎっちりと握り締めていた。

 全裸の中年男に顔を真正面に近づけられ、冷や汗を浮かべた洋平が、思わず後ずさる。

「しゃ、社長、か、顔っ、いつにも増して怖ぇっすっ」

「何が原因だ、言ってみろっ! 仕事かっ、応援団の練習かっ、それとも俺かぁぁぁぁぁっ!!」

「……」

 長い沈黙の後、言いにくそうな表情で、洋平は血色の良い唇をゆっくりと開いた。

「やっぱ……社長っすかね……」

 そうか。やはり原因は自分だったのか……。

(俺のこの秘めたる気持ちが、おめえにゃわかんねぇのかってんだ……)

 だが、琢蔵が黙って唇を噛み締めた直後、

「社長……うますぎるっすから」

 なぜか洋平は顔を赤らめて、照れたような表情を見せた。

「ああ?」

 想定していなかった返しに、琢蔵の頭はまた混乱する。

「しゃ……社長の、ク……クチマンコ……すっげえ良すぎて……」

 自分で口に出した言葉に羞恥を感じたのか、赤い顔を洋平は軽く伏せる。

「俺、まだ女も知らねえのに、なんかどんどん男にはまっちまいそうで……」

「……お、おめえ……」

 思いもかけなかった洋平の言葉に、どこか切なく締め付けられるような感情が、琢蔵の毛むくじゃらの胸の奥底からじわじわと溢れ出てきた。

 だが、男同士には、男と女のように甘い言葉など必要はない。

「バーロィ、当たり(めえ)のこと言ってんじゃねぇっ!!」

 突如琢蔵が張り上げたどら声に、洋平の背筋がぴんと伸びた。

「こちとらクチマンもケツマンもおめえみてぇなひよっこたぁ年季が違うんだ、年季が!」

「……すんません」

 琢蔵の毛深い腕の中でまた申し訳なさそうに頭を下げる洋平。

「む……」

 それを見た琢蔵の胸に、ふたたび後悔と乱雲が広がっていく。

(どうしていつもいつも俺って奴ぁ……)

 洋平の可愛い言葉に、なぜ自分は素直に反応できないのか。

「おめえ……」

 真面目な顔になった琢蔵は声のトーンを落として、軽く伏せられた洋平の目を見つめた。

「こんな助平でむさ苦しいホモのおっちゃんは嫌ぇか」

「ぁ……」

 その言葉があまりに意外だったのだろうか、どう対処していいのかわからないかのように、洋平の顔が赤く染まっていく。

「いや……嫌いだなんて、言ってねえじゃねぇっすか」

 赤らんだ顔を見られるのが恥ずかしいのか、すねた子供のように目を逸らす洋平。

「よし」

 その一言だけを口にした琢蔵は、洋平の頭をがしがしと撫でてやると、「も、もし……だ」、とつかえながら、

「おめえが、俺のせいで、お、男にはまっちまったら……俺が……」

 しかし、その言葉の続きは、からからの砂漠に垂らした一さじの水のように、琢蔵の口の中でもごもごと消えていった。

「……え?」

「いや……」

 ひげ面の間近で飛ぶ透明な小蝿(こばえ)を追い払うかのように琢蔵は二、三度頭をぶるぶると振ると、

「……どれ」

 ことさらいかめしい顔を作り、熟れた雄のにおいを放つベッドを骨太の指で差した。

「ちょっとおめえ、シャツとズボン脱いでここに仰向けに寝てみろ」

「えっ?」

「いいから、寝・ろ・っ!!」

 疑問符を顔に浮かべたままの洋平を、軽く巻き舌で凄みをきかせて睨みつけた。

「ったく、訳わかんねぇっすよ……」

 と、ぼやきながらも、洋平は言われた通りに服を脱ぎ、グレイのボクサーパンツ一枚の姿になった。

「なんだおめえ、まだふんどしじゃねえのか」

 飛流大応援団の現役団員は、全員ふんどしを着用する決まりとなっている。

「え……と、普段は俺、まだこっちで……」

「俺だからいいけどな、他の団員(やつら)に見つかったら、どなられるだけじゃすまねぇぞ。早ぇうちに慣れとけよ」

 洋平は、やや緊張の面持ちで、うっす、とひとつうなずき、ベッドの上に仰向けになった。

 琢蔵の目の前に灼けた肌、盛り上がった大胸筋に、カカオ色の乳首、しっかりと割れた腹筋がさらけ出される。このバイトを始めたころにはまだ胸や腹にうっすらと残っていた脂肪が削ぎ落とされ、かなり引き締まった体となっていた。

(ますますうまそうな体になりやがって……こいつ)

 思わず息を飲んだ琢蔵の淫らな欲棒が、またむっくりと反応した。

 ごくりと喉を鳴らした琢蔵も裸のままベッドへと上がると、どっしりとした毛深い尻で洋平の太腿を押さえつけながら、ゆっくりと洋平の上にのしかかっていった。

「っ、ひぃっ!」

 恐怖に顔を歪め、反射的に後ろにずり下がろうとする洋平を「黙ってろぃっ!!」と一喝した琢蔵は、

「せっかくこれから『気持ちいい』ことしてやろうってのによぉ」

 その意味ありげな言葉を正直に解釈したのか、洋平が()じけた顔でまた声を上げそうになった直前、琢蔵は両手の太い親指を洋平の両腕の付け根に置くと、ぎゅう、と押した。

「いででででででっ!!」

「そうかぁ、痛ぇかぁ」

 悪漢顔で琢蔵はにやりと笑う。

「なら、凝ってるってことだな」

「……えっ」

 そのまま琢蔵は大きな手のひらで、硬く盛り上がった洋平の大胸筋をつかみ上げるようにぐいぐいと揉み上げた。

「ちょ、ちょっと……しゃ……」

 突然琢蔵に胸を揉みしだかれた洋平はバレーボールのブロックのように両手を出して押し留めようとしたが、

「馬鹿、マッサージだマッサージ! こうやって、体ン中のいらねぇモンを流してくんだ、よっ!」

 琢蔵の太い指は鎖骨に沿って、ぐいぐいと洋平の脇の下のリンパ腺へと体内の老廃物を押し出していく。夏の日焼けが残る褐色の上半身を、大きな手のひら全体で包みこむように揉みほぐされ、少し安心した表情になった洋平は、抵抗をやめて琢蔵のごつい指に身を任せ始めた。

「どうでぇ、『気持ちいい』か」

「……うっす。ん……んん……あっ、そこそこっ」

 琢蔵の力強い揉みに完全に心と体から緊張を解いた洋平は、「ぉぉ……すげ、いいっす」と、あえぎ声交じりに愉悦の声を漏らし始めた。

 洋平の太腿の間で、焦らされた琢蔵の極太棒がひくり、と反応する。

(ちくしょう、色っぽい声上げやがって……)

 このまま「突撃」してしまいたいところだが、あまりにも無防備な洋平の様子に、琢蔵の戦意も失せてしまう。

「あ、どうせなら、肩のほうもお願いするっす」

 さすがに呆れた琢蔵は、いったんマッサージの手を止めて、「コラ、調子に乗んじゃねえぞ」と洋平の頭を拳で軽く小突いた。

「いて……ジョ、ジョータンっすよぉ」

 そう人懐こく笑う洋平に、琢蔵もそれ以上説教めいたことは口に出さず、また洋平の上半身を丹念にほぐしていった。三か月前の事件のことが、どうしても琢蔵を甘くしてしまう。もちろん、惚れた弱みもある。

「おめえもな……応援の練習の後、こうやって先輩にマッサージしてやるんだぜ。俺も現役ン時はよく先輩の肩や胸や何やらを揉ませていただいたもんだ」

「んー……『肩を揉む』だけならいいんすけどぉ」

 それまでリラックスしていた洋平の顔に、紗を一枚掛けられたような戸惑いが表れた。

「別んとこも揉んだりしゃぶったり、ってのは……っ、いてて……」

 愉悦とは違う苦痛の声に、「ん? どうしたぁ」と琢蔵は手を止めた。

「社長の手の硬ぇとこがこすれて……」

「『硬ぇとこ』、だぁ?」

 見ると、琢蔵のごつい肉厚の手のひらには、確かにあちこちにマメがある。

「これが引越屋の勲章ってモンよ」

 誇らしげにそう言い放った琢蔵は、洋平の坊主頭を平手で挟み込み、ぐりぐりと手のひらのマメをこめかみに押し当ててやった。

「いででででっ、痛てぇっすよぉ……」

「がはははははっ、どうだ、痛ぇか」

 琢蔵は悪ガキのように野太い声を上げて笑い、ざりざりと洋平の坊主頭を手荒に撫でた。

「おめえもこの仕事を続けてりゃ、マメの一つや二つできるようになるってモンよ。どれ」

 と、マットレスの上のシーツを握り締めている洋平の右手に、ふと手が伸びた。

 ――が、洋平の手は琢蔵のそれをするりと潜り抜けて、脇腹と下着のゴムの間をボリボリと掻いた。

「…………」

 眉をしかめ、掻痒に専心している洋平は、琢蔵の動きに何一つ気付いていない……のだろうか。

 中途半端に浮いたままの手をぎゅっと握り締めた琢蔵は、ぎこちなくその拳を口元に運ぶと、「…………げほっ」と、軽く空咳をして、

「ど……どうだ、ちょっと肩、動かしてみろ」

 言葉に詰まりながら、脇腹を掻き終わった洋平に声を掛けた。

 洋平は肩をもぞもぞさせながら、

「あー、なんかすっきりしていい感じっす」

 感謝しているのかいないのか、気楽な様子で口にする。

「『い・い・感・じ・っ・す』だ……ぁぁぁ?」

 大先輩からの奉仕をその一言で片付けられた琢蔵が、このまま黙っているはずもない。

「俺ぁそこいらのマッサージ屋じゃねぇんだぞっ!」

 言うが早いか琢蔵は、縮れた毛先が覗く洋平の下着の裾からずいと両手を滑り込ませた。

「あっ……そこ、は……」

(ここ)の付け根にもよぉ、リンパが集まってんだぜぇ」

 もっともらしく口にしながらも、にやにやと笑みを浮かべた琢蔵は、さっそく洋平の股ぐらの熱く湿った場所を遠慮なくこすこすとこすり始める。

「…………っ、ふ、んん……」

 肉の筒先から根元まで丁寧に撫で上げられた洋平は、どうにも垢抜けない顔を真っ赤に染め、嬌声とともにがくがくと身をよじらせた。

 琢蔵のごつい指先が紡ぎ出す微妙なタッチに(もてあそ)ばれ、洋平の雄肉は、下着の中で窮屈そうにこんもりと存在を主張し始める。

 右手で洋平の肉竿をいじくりながら、琢蔵は毛深い体をのしかからせて、固く尖った洋平の乳首をひげに覆われた分厚い唇と舌で、唾液をまぶすようになめ上げた。

 舌先から若い男の汗の味がする。琢蔵がまだ現役の団員だったころ、仲間同士でよく味わった、塩辛く、どこか懐かしい、青春の味だ。

「お……ぉぉ、ぅ……」

「んんん……ん……」

 二人だけの部屋で歯を食い縛ってあえぎ声を忍ばせる洋平が、なんとも初々しい。

 続けて琢蔵の左手は、逞しい洋平の胸板のもう一つの突起を探り当てた。

「ん、っ……ふ、ぅぅぅ……」

 洋平の反応が徐々に高まっていく。

 じっとりと先走りで濡れた布地を右手でやんわりとつかみ上げ、震え続ける肉棒の鈴口をピンポイントでくりくりと刺激する。

「く、ぅぅぅっ! ……っ、は……っ」

「おいおい、もうチンポから先汁だらだら垂れてんぜぇ」

 湿った音を立てて、琢蔵は分厚い舌とごつい指でひたすら洋平の固くしこった乳首と洋平の淫らな昂りを攻め続けた。

「んは、っ、んん……」

 琢蔵の老練な指と舌の動きに、洋平はイモ臭い顔をきつく歪め、甘い吐息を上げながら身もだえした。

「すっげぇやらしいよなぁ、おめえはよぉ。ホモのおっちゃんにチンポいじられて、そんなに感じてんのか」

 たっぷりと唾を付けて洋平の乳輪をねぶりながら、びしょびしょになった彼の下着の中心部を軽くねじり、

「ほんとに男に興味ねぇのか、コラ」

 と、がちがちの肉槍を握りこむようにぬちょぬちょと刺激を与えてやる。

「…………っ、んはぁぁぁぁぁ、ぁぁぁぁっ!! …………っ、俺、俺、もう…………っ!」

 強烈な電気が全身にびりびりと走っているかのように切迫した声を上げ、洋平は体を打ち震わせる。

 洋平の耳元で、琢蔵は意識して低く、いやらしい声で囁く。

「そろそろ俺にチンポしゃぶられてえか、洋平」

「…………っ」

 潤んだ目の洋平は、荒い息をつきながら、小さくうなずく。

 しかし、琢蔵は「んん? 聞こえねえぜ」と意地悪く笑い、

「それとももう手コキでチンポから汁出してえのか、ああ?」

 と、五指で作った肉厚の筒を洋平の高まった熱にオナホールのように密着させ、ぬちょぬちょと絡めた。

「ん、ぁぁぁぁぁぁぁっ! ……そこ、ちょ、それは、まだ……」

 男の急所自身に答えを訊かれ、追い詰められた声を洋平は上げる。

「恐れ多くも元団長にチンポをしゃぶってもらうんだ、それなりの言い方があるってモンだろが」

 洋平の喉の突起がゆっくりと下がり、ごく……り、と時間を掛けて唾を飲み下される音がした。

「じ、自分は……お……お、恐れ多く、も……」

 無精ひげが生え揃うその厚い唇から、ためらいと相反する吐息交じりに、ついに煮えたぎった欲望が叫びとなって出た。

「か、神戸元団長に……チ……チンポを、しゃぶっていただきたいであります!!」

 我が意を得たりとばかりに琢蔵はにやりと笑うと、

「ったく、ノンケのくせにホモのおっちゃんにチンポしゃぶられてぇってか。こいつぁ極めつけの淫乱坊主だなぁ」

 洋平の下着に毛深い両手を掛け、「ほれ、とっとと腰浮かせぃ」と促した。

「……うっす」

 ぎこちない動作で上げた腰から、琢蔵は慣れた手つきで下着をするりと脱がす。すると、透明な雫を浮かべ脈動している勃起ペニスが、ばね仕掛けのおもちゃのようにぶるん、と現れた。今日一日の労働でたっぷりと掻いた汗と先走りの生臭いにおいが入り混じった、より強い淫臭が琢蔵の鼻を突く。

「くっせぇなぁ……今日もよくがんばったじゃねえか。おめえのチンポの雄臭ぇにおいがたまんねえぜぇ」

「人のチンポのにおいで仕事振りチェックすんの、やめてくださいよぉ……」

 だが、抗議の言葉とは裏腹に、洋平の雄の肉塔は力強く天を指し続けている。

「どぉれどれ、おめえの可愛いチンポ、おっちゃんによぉく見せてみろ」

「……って、『可愛い』っつーと、なんか俺のが小っちゃいみたいじゃねぇっすかぁ」

 また口を尖らせる洋平に「悪ぃ悪ぃ」と笑い返すと、

「ちゃーんと俺が“マッサージ”してやるからよぉ。おめえの大好きな『ここ』で、な」

 と、ぺろりと出した分厚い舌を、透明な淫蜜で濡れた熱い肉塊のすぐ脇の、際どい部分を念入りに、かつじらすように舐め上げていく。

「……ぁ……ふ、うう、ん……」

 たちまち洋平の全身の筋肉は強ばり、唇から熱い吐息が漏れ始めた。

 続けざまに琢蔵は恥毛で覆われた睾丸を口に含み、じゅぷじゅぷと淫猥な音を立てて熱い口中で転がす。

「っ、そんな、金玉まで……は、恥ずかし……」

 何とも言えぬ強烈な味わいが口の中に広がっていくが、それはどんな媚薬よりも琢蔵を興奮させていく。

「う……ぅむ、うう……」

 獣のような低いうなり声を上げ、塩っ辛いミートボールを口の中で存分に転がした琢蔵は、ちゅぱっ、と音を立てて、ひげに覆われた唇からやっとそれを解放した。

「相変わらずコリコリした金玉だな、んん? こん中にくっせぇ雄汁たっぷり溜め込んでんのか、オラ」

「んはっ、んん、ぁぁぁ……」

 答えの代わりに洋平は小さくあえぎながら、じっとりと汗の玉が浮かぶ引き締まった体と、とめどなく露があふれ出させがちがちに硬直した肉棒を細かく震わせる。

「へへ、チンポでも返事してらぁな」

 きつく目をつむり、唇をわななかせている洋平に、琢蔵の舌は双玉から、肉の塔の先端へと続く裏筋をれろーりとなぞっていく。

「ぁ、ぁ……あ、ぁぁあ……っ!」

 まだ使い込んでいない生々しいピンク色の濡れたスペードの先を、ざらついた舌の表面でぺろりとこすり上げる。

「ああ、っ、んんん……っ!!」

 嗚咽に似た歓喜の声を上げた洋平の体が、ベッドの上でがくんがくんと大きく跳ねた。琢蔵の雄竿も痛いほど張り詰め、先っぽからじくじくと淫らな蜜を垂れ流している。

「いいか、おめえも先輩のチンポしゃぶらせてもらうときは、こうやるんだぜぇ。うむ……んん……」

 人擦れした笑みを浮かべた琢蔵は続けざまに、唾液と先走りで赤黒くぬめ光る洋平の亀頭をくわえ込んでいく。ぬるりとした液と、肉とは思えぬほどの熱く硬い感触が琢蔵の喉の奥まで伝わった。

「うへ……ぇぇぇ、っ!」

 応援団の先輩直伝にして琢蔵得意の、雄肉に舌をまとわりつかせるバキュームフェラに、洋平の口から軽い悲鳴にも似た声が漏れた。

 琢蔵はひとまず肉竿から唇を離すと、

「まずは、こーうやって、口をすぼめて唾と先汁混ぜるようにだな。ぐちゅぐちゅエロい音立てながら、しゃぶらせてもらうんだぜぇ」

 と、まるで仕事中のような口調で、洋平の亀頭の先っぽをちろちろと舌先で軽くあしらった。

「う、っす、っ……」

 歯を食いしばって生真面目に答える一方で、生臭い先汁を垂れ流し続けている洋平の亀頭を、琢蔵はまたがっぷりとくわえ込むと、きゅっと吸い上げ一気に根元まで飲み込んでいく。

「……んん、ぅぅ……んんんんーーーーっ!!」

(さぁて、そろそろ仕上げと行くかぁ)

 鈴口の部分は舌先でいじくり回しつつも、じゅっぽじゅっぽと肉棒の先端から根元まで長いストロークで、往復を繰り返す。これは琢蔵が現役の応援団員時代、遅漏気味の先輩相手に編み出した必殺テクニックである。

「ぅぅぅぅぅ、ん、ん、ぁぁんんーーーっ」

 こわばった全身をがたがたと震わせながら、両手でシーツを握り締めた洋平は、切羽詰った声をただ上げ続けた。

「社長っ、す、すげ……っ、チンポに、そんなやらしく舌、まとわりつかせられると……お、俺……もう……」

 びくんと洋平の体がのけぞり、琢蔵が頬張っていた雄肉がぷくりと容積を増し、

「で、出るぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 猛り切った洋平の先端から発射された熱いマグマが、琢蔵の喉をびゅるびゅると狙撃した。

「んっ、は……ぁぁ、ぁぁぁぁっ!!」

「むむ、っ……ぐは……っ」

 あっと言う間に琢蔵の口の中に、強烈な味とにおいの汁があふれ返っていく。雄汁の半分は飲み干したものの、生臭い汁が琢蔵の鼻の奥まで犯していく。

「げふっ、うぐぐ……っ」

 なおも白濁を吐き出し続ける洋平の砲身から、たまらず口を離した琢蔵は、陸に上がった野生のアザラシのようにベッドの上で大きく背を丸めて咳込んだ。

「……?! しゃ、社長、大丈夫っすかっ」

 心地よい射精の余韻に包まれていたのもつかの間、あわてて跳ね起きた洋平は、体毛に覆われた琢蔵の広く分厚い背中をごしごしとこすり上げた。

「……っ、相変わらずすげぇ量だな……」

「す、すんません、社長」

 洋平から手渡されたティッシュボックスから二、三枚まとめて紙を引き出し、口の中に溜まったねばっこい汁をその中に吐き出すと、さらにもう一枚でザーメンまみれのひげを拭う。

「……げほっ……いちいち、しゃ、『社長』はやめろっての」

「……はぁ」

 気が抜けたようにため息と半疑問の中間ぐらいの声を出した洋平に、琢蔵は向かい合ってあぐらを掻き、毛深くでかい尻をマットレスに沈ませる。

「今この部屋ン中にいるのは、社長でもその部下でもねぇ。ただのスケベな雄野郎二匹だけだ。公私のけじめってもんがあらぁな」

 そう言って、鼻の下のひげについた白濁の残りを無骨な人差し指でがしがしとこすると、青臭い洋平の匂いが鼻の奥まで伝わった。

「じゃあ、社長のこと、なんて呼べば……」

「そりゃあおめえ」

 まだザーメンを半分ひげにくっつけた顔で、目を大きく剥いた琢蔵はむさ苦しいひげ面をガッと洋平の前に近づける。

「だ、だから顔のアップはちょっと勘弁して……」

「あ……」

「『あ』?」

 琢蔵は一瞬ためらったものの、もう引っ込みがつかなかった。

「あ、あ……『アニキ』に決まってんじゃねぇかっ」

「…………」

 信じられない、という表情で、洋平は口をぽかんと開いた。

「ふへ……っ……た……琢蔵ア……アアア、アニ……ぐへへへ……」

 顔を真っ赤にして笑いを必死に(こら)えながら、洋平はその言葉を懸命に口に出そうとするものの、どうしても最後までそれを口にすることができない。

「いいんだぜぇ、無理に言わなくてもっ」

 琢蔵のいかめしい顔とぶっきらぼうな野太い声に、洋平はあわてて半笑いを噛み殺す。

「じゃ、じゃあ、『琢兄(たくにい)』」ってのはどうっすかっ」

 それならなんとか……と、洋平はおそるおそる機嫌を窺うように琢蔵を見た。

「琢兄、なぁ……」

 熊のように剛毛が生え揃う頑強な胸板の前で腕を組み、琢蔵は考え込む。

 琢兄。まあ、呼ばれて悪い気はしない。

 うむ、と琢蔵はうなずくと、「うっし」と声に出して、ベッドの縁に移動し、競輪選手のように太く毛深く、そして短い足を床に下ろした。その太腿の奥でおっ勃った剛棒は、てらてらと我慢汁でぬめり光る赤黒い頭を垂れる気配はない。

「……じゃ、シャワー浴びて来いや」

 だが、洋平は神妙な顔をしたまま、琢蔵の言葉に従おうとしない。

「どしたぁ、おい」

 余裕のある声を出したつもりが、どこか尻上がりに上ずってしまう。

「……」

「おいっ」

 返答しない洋平に、欲情に煽られただみ声がつい尖る。

「いつも俺ばっかりヌイてもらって……」

 ……すんません、と洋平は頭を下げた。

「い、いいってことよ」

 琢蔵は平静を装うものの、股間で燃えたぎる溶岩の灼熱を少しでも紛らわすべく、グローブのような手で両の太腿をがしがしとこすり上げる。

(おめえがシャワーを浴びているうちに、こちとら金玉にパンパンに溜まった雄汁早ぇとこぶっ放してぇんだよぉぉぉっ!!)

 心の中の怒声とともに、暴発寸前の雄棍と声が震えた。

「あの……もし、アレだったら……」

「あ、ああ?」

「俺、社長……あっ、琢兄のチンポしゃぶってもいいっすけど」

「な……っ」


 無料体験版はここまでです。この続きは製品版(デジケット委託)でお楽しみください。  

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 続きが気になる方のために、後半から少しだけ。



 洋平の引き締まった両脚の付け根からぶら下がっている、硬くなり始めた肉竿と雄精をたっぷりと仕込んだ若い双玉が、琢蔵の目の前でゆらゆらと卑猥に揺れる。

 洋平は上半身をベッドにひれ伏し、シーツにあぐらを掻く琢蔵に、若々しい尻の奥でひくひくと収縮を繰り返す、まだ色素が沈殿していない肉穴を突き出している。二人が全裸であることを除けば、それは何かに祈りを捧げているかのような(おごそ)かな儀式のようにも見えた。

(ぉぉ……)

 これ以上ない卑猥なアングルを目にして、琢蔵の股間でそそり勃つずんぐりとした色黒の荒武者も、びくんびくんとメトロノームのように大きく頭を振りかざしている。




 さて、琢蔵と洋平の関係は進展するのか、それとも……?


トップに戻ります。 さほど詳しくないプロフとか。 過去に書いた作品の解説。小説の前半・ミニコントも置いています。 飛田の小説をお買い求めになりたい方はこちらへ。 エロ小説書きの日常とか、考えることとか。 リンク集です。 雑文を置いてます。


 



     


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